会の設立趣旨

 文部科学大臣より今年6月30日付で北海道大学総長を解任された名和豊春氏は12月10日、「解任処分は不当」として解任取り消しを求める訴訟を札幌地裁に起こしました。北大クライシスの会は北海道大学における大学の自治及び教育研究への危機を共有し、立場の違いを超えて、名和氏の総長解任に関わる訴訟を支援し、訴訟を通じて収集、解明される情報の発信を行なうものです。

総長解任事件の概要

  • 1 名和氏が北大の学長に任命された経緯 
     名和氏は、北大の有権者約1500名の教職員の意向投票で1位となり、総長選考会議において候補者に決定され、文部科学大臣により北大の学長に任命された者である。2017年4月に就任し、任期は6年であった。
     前任の総長は、文科省が主導する大学予算削減に応じ、「医学部、歯学部、小部局以外では一律14.4%、教授担当で205人の人件費の削減」を打ち出した。これに対して、各部局が教育の維持や学問の継承が困難となる、若手教員が他大学・研究機関に出て行かざるを得なくなるなど、最高学府としての北海道大学の将来に対する危機感が学内に広がった。
     当時、学内では部局長、研究所長、センタ-長による会議が自主的に開催され、嘆願書を提出するなどしたが、改善が見られなかった。そのような状況で、名和氏が、人件費の削減率を7.5%に圧縮し、大学の教育研究水準の維持を図ることなどを訴えて総長選挙に立候補し、教職員の意向投票及び総長選考会議で支持され、再任を目指した前総長を破って就任した。
  • 2 解任された経緯
     2018年9月29日、事前の面会予約もなく、総長選考会議の議長と議長代行、大学顧問弁護士が総長室を訪れ、顧問弁護士が名和氏に「パワハラに関する公益通報を自分が阻止している、直ぐにお辞め下さい」等と言い、議長と議長代行がパワハラの録音テープが存在すると言い、3人で名和氏に辞任を求めたことに始まる。名和氏は身に覚えがないため、これに応じなかった。すると、総長選考会議は、11月6日、学外3名の弁護士による調査委員会を設置し、翌2019年2月に報告書の提出を受け、解任手続を開始し、5月と6月に名和氏に対する事情聴取を行なった。この間、北大は、教職員に対して経過を説明することなく、逆に口外しないよう箝口令を敷いた。
     また、名和氏に対しては、調査委員会が事情聴取をすることなく、同委員会の報告書資料は代理人だけが閲覧することが許され、本人自ら閲覧することが認められなかった。同年6月21日、総長選考会議は、調査報告書が認定した非違行為34件のうち30件の非違行為を認め、名和氏の総長解任の申し出を決議し、同年7月10日に文部科学大臣に名和氏の総長解任を申し出た。
     文部科学大臣は、2020年3月16日、名和氏に対する聴聞を実施し、同年6月26日総長選考会議が認定した30件の非違行為のうち28件を認定し同年30日付けで名和氏の総長解任決定を通知した。